KUHARA ARCHITECTS UCHIDA DENTAL CLINIC + HOUSE
00 introduction
01 exterior
02 dental clinic
03 house
04 concept
東京都内に建設された歯科医院併用住宅である。敷地周辺は風致地区に指定されており、大きな公園に近い緑豊かな住宅地である。そのなかで施主から示された最も大きな要望は、周囲の住宅との明確な差異を感じさせる医院としての佇まいであった。
風致地区の規制による道路・敷地境界線からのセットバック、必要な駐車台数の確保、アプローチ空間などを考慮しつつ、必要な面積を確保していくと、基本的には不定形な敷地形状に基づいたプラン形状になっていく。この不規則でバラバラな形をまとめて、医院としての品格を感じさせるような強いイメージを与える必要性が生じてきた。
もうひとつ施主から出されたキーワードに「やわらかさ」という言葉があった。歯科医院の持つ冷たい、痛いといったイメージを打ち消すようなものである。そこでこれらの2つの希望に応えるための方法として、一つの大きな曲面による建物の「裁断」を提案した。
曲面は機能面とデザイン面から検討が重ねられ、3つの相互に接する円弧により定義されている。その形状は元々のプランを構成するラインとはわりと無関係である。敷地境界線によって自動的に決定されるプラン形状のうち、正面(道路側)の境界付近のみをあえて曖昧なまま残しておく。こうして形成されたボリュームをこの曲面によって「裁断」することによって、全体の形状を決定する。幾分強引なその操作によって曲面に沿った線状の動線空間が発生し、不定形で複雑な構成の内部空間は微妙なバランスで一つに取りまとめられることになる。
一方、外観イメージにおいては曲面は強い特徴となるのだが、それを強い壁としては見せたくなかった。そこに存在していたボリュームが無関係な曲面に沿って突然切り取られるときに発生する曲面は「壁」ではなく「裁断面」でなければならない。したがって、曲面上には内部の機能的要求にしたがって、開口や突起物がさまざまな形や素材を伴って無作為に表出している。規則性は部分的なものにとどめ、全体を貫くルールはあえてなくしている。また、片流れの勾配屋根を持つボリュームが曲面によって切り取られることによって偶発的に発生する美しい曲線が建物のスカイラインを形成し、やわらかなイメージを表現する。
こうして形成された複雑なボリュームの中には、楔を打つように3つの光庭が挿入されている。1Fの歯科医院内には自然光による明るさ、植栽による安らぎと全体イメージの統一を、2Fの住宅にはプライバシーと採光・換気をもたらしている。
断面的には、1Fの歯科医院においては諸室ごとに必要な天井高さを設定し、それとうまく組み合わせながら2Fの住宅部分をステップフロア状に展開している。また、中間階に部分的に2つの空隙を生じさせ、それぞれ医院と住宅の大規模な収納スペースとして活用している。
05 data
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