S-K-Y 2020 

2020.09 スタジオ・クハラ・ヤギ 

中高層木造、耐火木造、都市木造、木造オフィス、木造マンション、ハイブリッド、準耐火木造など、新しい木造を目指したキーワードが、SKYの設計する建築を説明する際に用いられてきました。ここ5年ほどは都市木造の黎明期であり、何よりも『実現』、『普及』を優先してきたからです。われわれSKYはティンバライズと並走してきましたが、ティンバライズの前身であるPOWS(高層木造研究会)スタートは2001年、都市木造というキーワードをティンバライズでつくり使い始めたのが2010年です。10年毎の区切りとしての今年2020年に新しいキーワードを掲げます。

 ◇ 木・木造をキーワードにした「ことづくり」と、ここ何年かは言い続けています。

具体的には、木・木造を出発点としたプロジェクトづくりによって、まちづくりや林業活性化につなげたり、人と人をつなげたりすることです。2012年から2016年まで続いた福島県矢吹町の復興まちづくり支援や中心市街地活性化への助言は、そうした取り組みの一つでした。まちなか木造というキーワードを使い始めたのがこの時期で、都市木造と違って郊外や地方都市のまちなかにある小さな規模の木造建築を、現代的な木造として捉え、設計することで、まちを活性化しませんか?と提案したのです。2019年糸魚川市駅北大火の復興地に建設された復興住宅設計の際には、糸魚川産材ラミナを新潟県内工場で集成材にする試みを通して、地元産材の活用に道を開き、地元の有志まちづくり団体との共同ワークショップの開催を通して、まちづくりにつなげられました。 

◇ 技術開発・プロトタイプ開発をこれまで多く手掛けてきました。 

キットハウス・モバイルハウスの開発と活用法の提案は、2001年から細く長く続けてきました。フレームとパネルに合板を活用したプライウッドキットハウスにはじまり、その後2005年に薄型CLTを用いた改良型COCOを山佐木材と開発、2011年には、東日本大震災の震災復興に向けて、COCOを活用した避難所と仮設住宅の提案をしました。これが矢吹町への支援へと繋がります。2013年にはティンバライズプロジェクトとして木建具メーカーのモバイルハウス(または、モバイルショールーム)の設計・開発に携わっています。最近では、民泊拠点施設やグランピング施設としての活用も提案しています。

木質ハイブリッド集成材を使用した建築のプロトタイプ開発を2011年に行い、その際の知見をもとに、2017年に7階建高層木造ハイブリッドオフィスビルである国分寺フレーバーライフ社本社ビルを『改良型木質ハイブリッド建築』として設計しました。コスト面の改善と普及に向けての設計と施工の標準化を行いました。現在、その改良型を用いた施設の設計アドバイスを行なっています。

木造災害公営住宅プロトタイプ開発は、2014年に福島県内のゼネコンの依頼でおこないました。そこから始まり、2016年の矢吹町災害公営住宅、2019年の糸魚川市駅北復興住宅の設計へと、3階建の木造準耐火建築物のプロジェクトがつながっています。これらのプロジェクトでは、在来木造を主体構造とし、地元の大工さんが施工できるようにしながらも、厚板集成材パネルという新しい木質材料を導入することで、木材活用の提案を行っています。集成材厚板パネルのラミナに地元産の杉材を使用することで、需要の拡大へとつなげる試みです。 

ハイブリッド(混構造)を基本に、機能とデザインに合わせた構造を。 

新しい木造を追求するピリオドを終え、次のピリオドに向かって、その最新技術とデザインの蓄積を、さらに活かしていきます。木造はもとより、RC造、St造を適材適所で選択し、機能とデザインに合わせた建築をつくっていきます。 

◇ さまざまなビルディングタイプに広げていきたい。 

キット化・モバイル化、木質ハイブリッド構法、厚板集成材パネル構法といった技術を駆使してこれまで新しい建築にチャレンジしてきました。ターゲットは、都市部と地方の両方です。共同住宅やオフィス、保育園や集会施設での設計を活かし、小さな町のまちづくりに取り組みたいですし、複合施設や学校、図書館や美術館などの文化施設などに設計の力を生かしていきたいと考えています。厚板集成材パネルを採用した構法は、低層大規模の商業施設に向いているので、これも推進していきたいです。 

SKY next projects

これから推し進めていきたいプロジェクト 

自立する地方都市のための新しいまちづくりと新しい公共施設、コモンズ 

都市のスポンジ化、これからの居住形態、車と駐車場の問題、エネルギー問題なども踏まえ、新しい公共の形・これからの町のあり方を模索。超小型モビリティ、マイクロモビリティ、グリーンスローモビリティを導入したまちづくり、暮らし・にぎわい施設 新交通拠点、多極ネットワーク型コンパクトシティー) 

2 都市居住と働き方の変化、そして変わる地方都市 

リモート社会前提の中で、それでも都市に住まうことの意味や価値を見つめ直した上での居住空間やオフィス空間の計画が必要です。郊外や地方での居住と在宅勤務は増えるでしょう。そうした時に変わって行く地方のまちづくりと建築に必要とされるもの。働き方を場所や規模などから捉え直したワークスペースのデザイン。

3 環境社会に残っていく良質な都市資源となる建築 

リノベーション・コンバージョンが盛んに行われている。図らずも再利用されている建築物もある中で、これから新築されていく建築は、将来的にリノベーション・コンバージョンとなった時代にも、柔軟で美しいスケルトンでなくてはならない 

 

1 新しいコモンズ〜良質な都市資源となる建築 

キーワード)防災・減災、暮らし・にぎわい施設 サイクリング・インフラツーリズム、観光施設、新交通拠点、多極ネットワーク型コンパクトシティー 

Scale: 低層中規模 

Type:  図書館・美術館×市民サービス機能 

    地域拠点(商業施設・複合施設)×学校 

2 居住×ワークスペース   

モビリティ×モバイルハウス×リモートオフィス〜自然な暮らしとしごと 

キーワード)働く環境の変化〜リモート社会、都市に住まうor郊外や地方に住まう 

Scale: モバイルハウス、プラグインハウス 

Type:  居住×ワーク、グランピング、自然との共生