ニュースリリース
『普及を目指した木質ハイブリッド建築の提案』~国分寺フレーバーライフ社本社ビル・プロジェクト~

株式会社スタジオ・クハラ・ヤギ一級建築士事務所
代表取締役 八木敦司
代表取締役 久原 裕
(NPO法人team Timberize 理事)

このたび、2016年9月に建築確認申請許可が下り、晴れて着工の運びとなりましたのが、約1年前の2015年10月に国分寺フレーバーライフ社本社ビル(以後KFL)新築への設計提案として採用された私たちが推奨する「木質ハイブリッド建築」です。私たちはNPO法人team Timbeirzeの理事として長年、その活動を通して木造の新しい可能性を追求してきました。なかでも「都市木造」建築の一端を担うのが「ハイブリッド」という手法です。
日本集成材工業協同組合が1時間耐火の認定を取得している柱梁部材「木質ハイブリッド集成材」を活用し、鉄骨造でありながらも、最上階から4階分の階の鉄骨構造フレームを耐火被覆材としての集成材で覆うことで耐火建築物を実現できます。 このたび私たちは、都心部さらには駅前などの密集地や狭小地でもっと手軽に木質ビルを実現できる「普及型ハイブリッド・モデル」を探求、KFLにて具現化しました。木造建築物等の技術の進展と普及啓発を目指し、平成27年度第2回のサスティナブル建築物等先導事業(木造先導型)に採択されています。

□ 本計画の特徴 □

 技術開発と検証
1 接合部に工夫を加えることで施工を簡易化しコスト削減につなげています。
2 2時間耐火と1時間耐火の境目となる階の耐火設計法の確立
3 ハイブリッド材と市販耐火被覆材による柱梁を自由に組み合わせることの出来るための耐火検証、木質ブレス材の耐火検証。

 まちなかの景観形成
ハイブリッドが採用された上層階ではガラスカーテンウオール越しに木質フレームが見えるようになっており、下層階では外装に木質外壁材や木質ルーバーを採用しています。適材適所に木を活かしたファサードが形作る景観は、日本の都市をこれから特徴づけていく上でなくてはならいものです。

□ 耐火木造建築の現状
オフィスビルであったり、高層マンションであったり、木を活かした高層ビルを建設しようとする時、まずはほぼ間違いなく耐火建築物でなければなりません。耐火建築物とするには、認定された工法で行なう必要があり、現在ではおおまかにいって、A耐火木造(構造体も耐火被覆材も木である工法)か、B木質ハイブリッド造(鉄骨構造に木の耐火被覆)、もしくはC被覆工法(木造の構造体に石膏ボードなどの耐火被覆)となります。建築物に木をどんどん使用していくという意味ではABCともにOKですが、Cは木が表にあらわれてきません。Bはコスト面では鉄骨造の建物に耐火被覆の木のコストをプラスしたコストと考えればよいです。また、木が表れてきます。Aは構造体も木造であり、木があらわれるという意味ではとても意義深い工法ですが、コスト面でまだ高いのが現状です。

□ 地球温暖化を抑制するための産業改革
2015年のCOP21において、従来の先進国・途上国という枠を超えて、196か国の国が温暖化対策をとるというパリ協定が成立し、温室効果ガス排出量を実質的にゼロにしていく方向が打ち出されました。これからCO2を排出しない社会が世界的にもスタンダードとなります。建築業界においては、CO2をストックできる木造・木質の建築が注目され、いままさに今までに無い勢いで建てられています。この動きは一過性のものでなく、20世紀と21世紀では産業に対する考え方が変わったと見るべきであり、今後CO2削減も含め、環境に配慮しないビルディングプロジェクトは公共民間を問わず、実現が難しくなっていくでしょう。

□ ハイブリッドという思想
自動車業界で使われて久しい「ハイブリッド」という思想は何十年という時が既に流れています。その後、電気自動車が市販され、Googleによる自動運転技術を搭載した自動車まで技術開発は進んでいますが、世の中では未だ「ハイブリッド」車が市場に価値を示しています。建設業界においてもこのような「ハイブリッド」段階は必要だと考えます。技術の確立した既存技術をベースにしながら、新しい「環境配慮」の思想を取り込んでいく手法は、一般ユーザーにとっても分かり易く馴染み易いものです。安全性と信頼性を担保しつつ、徐々に新しい価値観の社会へと進んでいく上でとても大切なプロセスです。

□ 適度なコストパフォーマンスを備えた木質ビルへ
私たちの提案する「普及型ハイブリッド・モデル」は、勿論そうした環境的側面を考慮したものです。『木をつかったビルディングを建てたいがコストがどのくらいかかるのだろう?』、『木で建てて構造的に大丈夫?火事には?』と不安に思い、木のビルディングプロジェクトを諦めていた建て主さんにお薦めするためのモデルです。国分寺フレーバーライフ社本社ビルでのコスト計画、設計計画、技術検証によるデータと見識を活かして事業化段階でのコスト見通しが可能です。構造は通常の鉄骨造ですので建築確認申請においても特別な手続きは不要です。 建物は30年と言わず50年、ひいては100年でも立ち続けていきます。100年後の社会に残す建築物として、是非「木を使った建築」を建てて欲しいと思います。そのためには、皆さんが事業的に建設し易いモデルが必要であり、それが「普及型ハイブリッド・モデル」なのです。

□ 体制
KFLでは、基本設計段階から技術協力として建設会社に参加してもらい、技術提案とコスト計画を練りあげました。また、NPO法人team Timberizeには、木造木質建築全般の監修と構造面、耐火面のサポートをしてもらっています。昨今、設計・施工一体型でのプロジェクトが増えてきましたが、理想的には、設計と施工が連携しつつも独立し、技術面の監修なども含めたネットワークを形成した体制が望ましいと考えます。私たちは、「構想から設計〜建設までを、複数のパートナーが連携して行なう」ビルディングプロジェクトを目指しています。

□ 建築概要
国分寺フレーバーライフ社本社ビル
所在地:東京都国分寺市本町4-1-12
敷地面積:180.80㎡
延床面積:602.11㎡
構造:鉄骨造 7F建
竣工予定: 2017年7月
設計:スタジオ・クハラ・ヤギ+team Timberize

 


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