矢吹町中町第一災害公営住宅
YABUKI NAKAMACHI DANCHI 1
第37回 東北建築賞作品賞 |
第20回 木材活用コンクール
最優秀賞 国土交通大臣賞
第34回 福島県建築文化賞 復興賞 |
ウッドデザイン賞 2016
宿場町の記憶を伝える木の景観形成
~ 大きな木の軒空間
私たちが復興まちづくりに関わってきた福島県西白河郡矢吹町の、木造による災害公営共同住宅の計画です。災害公営共同住宅は原則RC造ですが、東北地方のRC造建設コストの高騰で計画が進まない状況を鑑み、地元ビルダーで建設可能な木造を提案しました。在来の軸組に新技術の集成材厚板床パネルを組み合わせた新しい構法が特徴で、豊富な県産材を大量消費して地域の山・林業・産業に貢献しつつ、地域の技術活用とスキルアップを図りました。
集成材厚板床パネルの高い剛性を活かした大きな「木の軒空間」は、旧奥州街道沿いの宿場町であった敷地に新たな木の景観を形成しつつ、地域の小さな公共空間を作り出します。「木の軒空間」は住戸のテラスへと続き、2つの住棟間を貫く「とおり庭」と、ガラス引戸の玄関からリビングアクセスするオープンな構えの住戸との交流の場となって、長らく仮設住宅で暮らした住民の良好なコミュニティ形成を促します。
木のデザインの可能性 ~ 人とものをつなぐいきいきとした「許容するデザイン」
建築外周のテラスや庇に新技術の集成材厚板床パネルを使い、高い剛性を活かした大きな軒空間(面材)を実現。小さく分節された木の外壁(面材)や、木の防雪ルーバー、配管カバー格子(線材)を分散配置して、適度な冗長さと複雑さを持つ奥行き感のある「木のファサード空間」を作り出します。ここに生活が猥雑に溢れ出すことで、人とものと建築が混然一体となる縁側のような生活空間の魅力が醸し出されるようになります。これからの時代に必要なのは、モダンデザインが持つシャープで抽象的なかたちではなく、また伝統木造の繊細で技巧の粋を尽くした造作でもない、木の多様性が人とものを繋ぎいきいきとした活動を喚起する「許容するデザイン」だと考えます。
撮影:淺川敏 |