カーデザイナーのための、車と共に暮らすための住宅である。
とはいっても、住宅内に車を入れるような個人的体験としてのいわゆる「ガレージハウス」ではなく、ただキレイなガレージに車を収納して見せるのでもない。住宅と街とつなげるような、新しい「車との共棲」を提案している。

敷地は、名古屋郊外の宅地用に開発された地域で、周囲には雑多な戸建住宅が建ち並んでいる。こうした場所で難しいのは周辺との距離感である。完全に閉じてしまうと周辺との調和が取れないし、逆に開放しすぎてしまうと住みづらいものになってしまう。そのために必要なのは、街と住宅との間に設定される適切なバッファゾーンである。そこで、ガレージがバッファゾーンになるような配置を考えた。
住宅の平面は機能的な諸室を四隅に配置しセンターを共用空間とすることで、緩やかにくびれたワンルーム空間となっている。これに沿って外郭は凸凹となっていて、そのくぼみに車がすっぽりと納まるガレージが作られる。ガレージは外部ではあるが、くぼみの部分だけに開口が設けているため、住宅と親密な関係を持つ半内部空間とも捉えられる。
内部から見ると、ガレージは住宅の延長のような空間であり、常に車と隣り合いその存在を感じながら生活することができる。そこがバッファゾーンとなることで、道行く人々との適正な距離感が保たれる。
外部から見ると、ガレージは奥に引き込まれた路地的な空間であり、車が停まることによって住宅とのほどよいつながりを感じることができる。
住宅のデザインとして、外観的にも内観的にも、車がぴったりと納まることで完成するのが大きな特徴である。それが、個人的な体験に留まらない、街とつながり共有される「車との共棲」のかたちを体現している。
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photo by Nobuki Taoka