愛知県の中規模の都市内の分譲住宅地の一区画における、戸建住宅の計画。(株)プログレッソと共同設計。

分譲住宅地はまとまった規模で住宅が立ち上がるため、個別のデザイン云々よりも一連の街並としてデザインすると面白い。しかしながら、現実には供給者の意識は希薄で、また消費者の関心はそこにはなく、非常に似通った住宅が立ち並んでいるのに街並としては最悪な結果となっているものがほとんどである。

幸いにして、今回は連続した一列(8棟)の計画だったので、特にこの点に留意して計画をおこなった。基本的に白いボックスが重なるように配置されるのだが、前面道路に対して平面的に凹凸となるように配置して、変化と奥行感を演出する。各住宅に1本のシンボルツリーを配し、住民にも周辺にもこれが享受できるようにすることで、自然に街と住宅が融和するように意図している。立面的にも二階建部分と平屋建部分がリズミカルに配されており、平面的な効果と相乗して街並に視覚的な変化を与えている。

一方、住宅は大きな中庭を持っていて、玄関を通り抜けて直接中庭にアプローチできるという特徴を持つ。中庭は外部(街)と内部(住宅)をつなぐ半パブリック・半プライベートな中間的な領域である。都市部の分譲住宅地における完全に仕切られた庭でもなく、郊外の分譲住宅地における曖昧な余白としての庭でもない。街にとっても住宅にとっても、この領域をもっと積極的に使っていこうという意図である。この中庭の存在は無論、街並の形成に大きな影響力をもつ。

住宅自体は典型的な分譲住宅の「間取」であるが、オープンな階段などの動線がすべて中庭周りに配されており、住宅内の移動が中庭を回遊するような計画である。中庭にはもう一本のシンボルツリーがあって、家族の結び付きを象徴するものとなっている。

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