北海道の岩見沢駅新築のための公開コンペティション出品作である。

岩見沢は石炭輸送のための鉄道と共に発展してきた街であり、駅舎は市民のシンボルというべき存在であった。しかし、長きに渡り親しまれてきた3代目の駅舎が焼失、現在は仮駅舎での営業を強いられている。それは、石炭産業の衰退と共に沈んだ現在の雰囲気をある意味象徴している。そんな現状を払拭し、これから新しく生まれ変わる街にふさわしいデザインとはどのようなものなのだろうか?

とはいえ、いたずらに新奇なものがふさわしいとは思えない。歴史は非常に重要であり尊重されるべきである。それゆえに、過去の駅舎のデザインの形態を最も純粋に還元した「切妻」を引用し、ここに全く新しい駅舎を内蔵することにした。内部には動線計画の解析により導き出された「ストリート」の網が張り巡らされている。ストリートの結節点は吹抜となり、小さな「広場」が形成される。広場は屈折するストリートを介して緩やかに見え隠れながら繋がり合い、総体としての駅舎空間を形成する。これはただの巨大な空間として存在する既存のターミナル駅とは全く違うものである。

駅舎の外壁は煤けたように黒ずんだレンガによって覆われており、記憶を継承する純粋なオブジェとしてデザインされている。そこには内部空間の広場やストリートにしたがって不規則な開口が穿たれ、あたりが夕方から夜になるにつれて次第に光のオブジェへと変わる。こうして新駅舎は理屈抜きに美しくあり続けることにより、市民の新しい心の拠りどころとなる。

→この画像をクリックすると、出品作を大きな画像でご覧いただけます。