チェーンストアのデザインは、どちらかと言えば建築家不在の分野だと思われるが、それらが総体として都市空間に与えているインパクトを考えると、見過ごすことはできない領域である。標準化・共通仕様化を徹底的に追及し、ありとあらゆる場所にそれを当てはめて店舗運営の効率化を追求しようとするサービス提供者側の内部論理と、現実の敷地やその周辺環境がそれぞれに持つ個別性・特異性という外部論理。この二つが烈しくぶつかり合うところに可能性があるのではないか。
この店舗では、標準プランを内包する単純な箱に、「ハチマキ」と我々が呼んでいるリボン状の看板を、緩やかに建物本体にまとわりつかせている。このアイテムにより、
・ ロードサイドショップに必要不可欠な、看板としての視認性の獲得
・ 「ハチマキ」と建物本体のあいだの空間を活かした、店舗の顔となる特徴的なエントランスの実現
・ 「ハチマキ」と建物本体の隙間にバックヤードや設備機器類を隠すことで得られる、周辺環境との適正な距離感の保持
などが可能になった。
「ハチマキ」は、上記の内部論理と外部論理を媒介する装置として機能し、チェーンストアの「建築」としての新たな可能性を提案しているのである。
|