西武池袋線大泉学園駅から徒歩3〜4分程度とわりと近い敷地に計画された、4戸のワンルームと1戸のメゾネットからなる小さなアパートメントハウスである。

クライアントが母親から受け継いだアパートを、子の世代に引き継いでいくために建て替える計画だった。しかし、既存不適格であった古い建物のようには行かなかった。敷地が狭い上に建蔽率が割合低いため、自由度が極めて低いのだ。与えられたプログラムを消化するだけでもなかなか厳しいため、共用部が建築面積にできるだけ含まれないようにして専有率を上げなければならない。長屋にするとうまく行かないこともわかり共同住宅となったため、窓先空地などの法的要件を満たす必要がある。さらにクライアントからは、各住戸が南面し良好な環境を享受できるという希望が提示されていた。これらをすべて満たすためには、必要な空地をどのように取るかが問題となる。したがって、デザインアプローチは住戸のボリュームを積んでいく方法ではなく、全体のボリュームから空地を抜いていく方法が適している。そして残ったボリュームに住戸をフィットさせてみて、その結果をフィードバックして再度全体ボリュームのマイナスを行なう。与条件が厳しかったために作業は難航したが、粘り強くデザインプロセスを繰り返すことにより、次第に形態が幾つかのパターンに収斂されていった。

こうして最終的に採用されたのは、すべての条件を満たすために少しずつ変形されていった不思議な平面形の中庭を持つプランである。光をできる限り多く取り入れ、広がりを感じられるようにスタディされた中庭は、建物全体に優しく包まれながら、敷地外部と緩やかに繋がって、程好いプライバシー感とパブリック感を併せ持つ空間となっている。同時にアパートの記憶をつなげていくイメージを持たせている。住戸内部はとても小さなワンルームであるが、不整形のプランが部屋を狭く感じさせない。開口の取り方や天井高さの工夫で、更なる広がりが感じされるようにしている。材料は木質系のものを多く使い、石油製品などをできるだけ用いないことで、古くなっていくことで得られる雰囲気が感じられるように意図している。非常にローコストではあるが、いい意味でシンプルで無駄のないものになったと感じる。

写真上より

北面道路より見た建物全景。緩やかに外部に対して閉じながら微妙な距離感を保っている。

不整形な中庭はスギ板貼りで、柔らかく暖かな共有感を喚起する。

池不整形な住戸プラン、ラーチ合板による傾斜天井、額縁のように切り取られた開口(南面する小学校の校庭に大きく開かれている)によって構成されるインテリア

模型イメージ。不思議な形をしているが、理に適ったものであるため説得力はある。