東京の都心部に計画された共同住宅である。上層部がフラットタイプの広めの部屋で、その他がメゾネットタイプの小さな部屋として計画されている。敷地が小さいため、素直に計画すると何の特徴もないワンルームマンションのようになってしまう。クライアントにはデザイン性を求められていたこともあり、違った切り口からのアプローチを試みた。

敷地が小さいケースでは共用部をいかに効率よく配置し、住戸の自由度を上げるかが鍵になる。ここでは、メゾネットを採用することで共用廊下を2階に1つずつとした。さらにこれを建物の真ん中に通すことで、いわゆる片廊下タイプの弊害をなくし、住戸の実質的な2面採光や通風を積極的かつ快適に行なうことを可能にしている。

また、各住戸のメイン採光面である道路側には吹抜を配しており、光を住戸内にいっぱい取り込みながらメゾネットであるがゆえの空間的な豊かさを存分に享受できるようになっている。

ファサードは、メゾネットによって構成される内部空間を素直に表現した縦長のプロポーションと、建物内を貫く共用廊下の「穴」により構成される。周囲の水平ラインを強調したデザインとは一線を画すものである。